白樺王子の愛するブログ

ほんとうのしあわせのために

満月の夜に僕らは出会った


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はてなインターネット文学賞「記憶に残っている、あの日」

離婚してから4年と半年がたった。そろそろ孤独の寂しさに耐えたれなくなってきたこと、そして自分の好きなことをたくさんして、キラキラと輝き始めた自分、今の自分ならしあわせを共にできるパートナーと出会って、同じ世界を共感できるはずだ!と僕の未来は輝かしかった。

2019年の夏のある日、僕は婚活サイトに登録し、再婚に向けて新しいスタートラインに立った。サイトに登録して1週間くらいで一人の女性とお会いすることができた。けれども、会ったそのあとから音信不通になり、婚活の厳しい現実を叩きつけられた気分だった。

何がいけなかったんだろう、と自分でもわからず仕舞いだったが、幸運にも次の女性ともお会いすることができた。でもメールで会話している印象と実際にあってみるとかなり印象が違ってギャップに戸惑ってしまう。結局、その女性とも音信不通になり、なかなかうまくいかないものだな~と落ち込み始める。

新しい出会い、会話が始まると、ワクワクする未来がいっぱい浮かんでくる。けれども、少しオリが合わなければサクっと切れる縁。期待しすぎなのかな...。何人目かにあった女性にもっと気軽でいいんじゃない?って言われたのを今でも覚えている。

その女性に言われた今でも覚えているひとこと、あなた本当に人を好きになったことある?だった。どうも、僕は女性に「愛されている喜び」を与えることができない男のようだとこの時認識した。

落ち込んで帰ってくるたびに僕は丘の上の公園から街を一人で眺めてぼーっとしていた。その時に自分の中にあったしあわせのイメージは二人で仲良く手をつないで夕暮れの時間、ヒグラシの声を聴きながらこの丘の上の公園の散歩している映像だった。

もう何人目か忘れたくらいの女性と別れて、また丘の上の公園で雲を眺めていると、数人の女性からいいねが入っていた。見てみるとみんな遠方のシングルマザーだった。自分の中でシングルマザーは少し敬遠していたので、いいねのお礼をしてお断りを入れようと思っていた。数人の女性とメールしているうちに幾人かが脱落していって、一人の女性が残った。とても印象的なまるで詞のような文章で僕にメールを送ってくる。

そういった文章は僕も好きだった。そして僕は相手に合わせるのが得意ということもあって、同じように自分の出来る限りのロマンを詰め込んだ文章で彼女と会話していた。

彼女は月が好きだと言っていた。それがとても印象に残っていた。そしてある夜、とてもきれいに輝く月を見て、彼女を思い出しメッセージを送った。そのことを伝えると彼女はとっても喜んでいるようだった。その反応が嬉しかった。

彼女とのやりとりは楽しかったけれど、正直なところ、もう心は結構ズタズタだった。期待と失望の繰り返しで、僕の心は波の大きさに耐えられていなかった。なので、その女性とは僕が返信を打ち切る形でやめてしまった。心の中でお元気で。楽しかったですと伝えて。

しばらく誰ともメールをしない時期があった。もう諦めようと思っていた。そんな折にまた印象的な文章で彼女がメールをくれた。

もう、終わっちゃったのかな?私はあなたにとっても優しくしてもらいました。とても嬉しかったです。私は会いたいと思っています。自分の願い、叶えてあげたいと思っています。今日は満月ですね!すべての人がうまくいきますように。

たしか、こんな文章だったと思う。そして、何人もの女性とやりとりしてきたけれど、こんなあたたかいメッセージをもらったのは初めてだった。

この時、僕は正直戸惑った。遠方だったこと、シングルマザーであること、この二つがどうしても引っかかっていた。条件が合っていなかった。けれども、会ってみたい。それが僕の本音だった。彼女は顔写真を出していなかった。それでも会ってみたいと思った。そして僕は彼女と後日会う約束をした。


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その日は風の強い遠方に台風が上陸している日だった。

 

12時15分、大宮駅のルミネ2のとあるイタリアンレストランで待ち合わせだった。僕は11時30くらいにすでに大宮駅について場所を確認した後、落ち着かずにウロウロとしていた。彼女の目印は白とグレーの薄いストライプのシャツスカートにスリムジーンズ、黒のコンバースにパールのピアス。

そういった女性が歩いていないかずーっとチェックしていた。しかし見つけることはできず、5分前にはレストランのベンチに座っていた。時間になった。でも彼女は現れない。ドタキャンかな。と思ってうつむいていると、目の前に黒いコンバースが見えた。

ハッとして顔をあげるとそこに彼女が立っていた。そしてまたしてもイメージと全然違っていた。これはとても良い意味で。

彼女はニコっと笑ってこちらを見ていた。少し日本人離れした顔立ち、すらっとした少し背の高めの凛とした女性だった。はじめましてとお互いに挨拶を交わしてから、僕はレストランに彼女を案内した。そして席について話を始めた。

彼女はサイトではサラという名前だった。僕は今までの経験から、脈略の感じない相手に本名を明かさないようにしていた。しかし、彼女にはすぐに本名を明かした。

僕はダイスケと言います。

すると彼女は

私はアヅサです。アジアの亜に津軽の津にすなで砂とかいて亜津沙です。

名前を聞いたときになぜかにんまりしてしまった。なぜだかとても姿と名前がマッチしていてかわいいと感じたからだ。

そして彼女はパールのピアスにかぶせる様にスターの形をしたイアリングをしていた。僕にはそれがとても可愛らしく見えた。そして彼女はとても浴衣が似合いそうだなと、なぜだか思った。思わず彼女に浴衣とか好きですか?と質問していた。正直、普通の女性ならこの時点で少々惹かれているんだろうなと今思い返しても思う。

食事を終え、いつもならもう帰る段取りに入るところだったが、もう少し彼女と話がしたかった。しかし、なかなか言い出せない自分。並んで歩いていると、妙に彼女が僕の近くを歩いていた。少し肩が触れ合うくらいの距離だった。そして彼女ももう少し僕と話したいんだろうと察知したので、思い切ってお茶でもどうですか?と誘うと、彼女は嬉しそうに返事をした。

それから、ロクでもない自分の話をたくさんした。そして彼女は相変わらず不思議な話をいっぱいしていた。魂の話、宇宙の話、こりゃ完全にスピリチュアル系な女性なんだなと思った。たまに話についていけなくなったけど、自分の中の未知の世界が切り開かれるようで楽しかったので、知ったかぶりでもなんでもして一生懸命、話を合わせた。

そして夕方、彼女と大宮駅の改札でお互いのLINEを交換し合い別れた。車を運転していると夕焼けがとても美しかった。遠くの台風の風の影響で、大気が澄んでいたようで、鮮烈に夕光が目に入ってくる。あの刺激を今でもくっきり思い出すことができる。

帰りがけにらーめん屋によって夕飯を食べていると早速彼女からLINEが来た。なので僕は帰りの夕日がきれいだったことを伝えると彼女はこういった。

私もダイスケさんがこの夕日をみているのかな?と思いながら電車に乗っていました。私たちがどうして出会ったのかわかってきました。今度は一緒に見たいですね!

 
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実はこの日の次の日、僕はもう一人女性と会う約束をしていた。その女性もとても好印象で亜津沙とその女性とで悩んでいた。その女性は写真を載せていて、とてもタイプだった。メールのやりとりも理想的だったし、趣味も一致してた。家も近いし条件はとっても良かった。だから正直相当悩んだ。

亜津沙と話していた時になぜ遠方の僕を選んだのか?を聞いたときに、彼女は条件で相手を選ぶことはしないといっていた。この言葉も衝撃を感じた一言だった。何か優しさの奥に強さを感じるようなすごく僕の心に刺さった言葉だった。

次の日、もう一人の女性と会った。話もとても楽しかった。彼女の会社まで出向いて、一緒にドライブがてら夕飯を取り、彼女の家まで送っていった。その後彼女ともう一度会う約束をした。一方で亜津沙とのやり取りもしながら、僕の心に少し罪悪感のような気持ちがあった。

その週の土曜日、僕は一人で趣味のカメラを片手にお気に入りの写真スポットを回っていた。亜津沙はどんどん僕に惹かれていっているのを感じた。僕たちはお互いを亜津沙、ダイスケくんと呼び合うと決めた。もう正直これは付き合っているカップルか?と思えるくらいのLINEのやり取りだと思った。そして、なんとなく僕は決心した。僕が選ぶのは亜津沙だと。明日会う女性とはしっかり本心を伝えようと。

次の日、女性と会って、お互いの趣味のカメラを楽しんだ。一緒に散歩したり、とても穏やかな時間を過ごした。正直、メチャクチャ楽しかった。もう、僕の心は崩壊状態だった。選ぶ苦しさに心がはちきれそうだった。最後の最後まで悩んだ。条件で選べば完全にこの女性だった。しかし、僕の心にあの言葉が残っていた。条件で人を選ばない。

彼女と別れ、家に着くと彼女からLINEが来た。彼女は僕に好意を持っていることをしっかり伝えてきた。そして...。僕はこのLINEでしっかり決心が決まった。そして僕はこう返信した。

今日は本当に楽しかったです。ありがとうございました。実は今日、あなたに会う前に心に決めた人がいました。そしてあなたに感謝を伝えるためにお会いしたこと、最後まで伝えられずにごめんなさい。どうか素敵な人を見つけて幸せになってください。

すると彼女は、実はそうじゃないかと思っていたと返信してきた。そして幸せになってくださいという旨のメッセージが届いた。僕は心の中で彼女にとても感謝した。最後まで僕の行いを受け入れてくれた。それと同時に何か熱いものが僕の心の中にこみあげてきた。そして僕は亜津沙にLINEした。

亜津沙、起きてる?

起きてる、さすがにまだ寝てない(笑)。

今日は新月だったよね?一緒に新月のお願いをしよう!今、丘の公園まで移動するから少し待っててね!

うん!

 そして僕は公園まで走った。そして公園から見える景色の夜景を彼女に送って二人でこんなお願いをした。

お互いがお互いの手をすぐ近くで握り合える毎日が過ごせますように

 
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彼女はとても喜んでいた、というより、嬉しくて嬉しくて涙が止まらないといっていた。そんな彼女の反応を見て僕はとてもしあわせな気持ちでいっぱいになった。そして新月のお願い事をノートに書いて壁に貼った。

亜津沙の手をいつも側で握っている


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そしてこの日から、僕は亜津沙と一緒に生きていくと決めたんだ。